栄久堂の強み
斬新な企画の実現から、心を込めた贈り物としての製本まで
本作りへの思いと技術力
栄久堂には本と製本をこよなく愛するメンバーが集まっています。その思いをベースに、20〜30年にわたって製本に携わってきたベテランと若手が連携し、技術伝承を進めながら、日々新たな本作りを実現しています。日本の伝統的な製本技術はもちろん、国内ではあまり知られていない海外の製本技術も積極的に取り入れ、活用しています。
ゼロから生み出す企画力
思い出を形にして引き継いでいけるのも本ならではの魅力です。あるお客さまの「子どもが生まれる前のマタニティフォトを本にしたい」というご相談には、表紙の素材としてアクリルを採用し、過去に例のない本作りを実現しました。このようにさまざまなニーズに対応し、ゼロから企画をまとめて形にしていく体制が整っています。
柔軟な対応力
私たちは、お客さまのわがままを徹底的に聞きます。どんなに特殊な本でも、前例のない本作りでもあきらめません。過去の膨大な実績と経験をもとに提案し、お客さまのイメージを具現化していきます。「技術や素材のことはよく分からないけど、相談に乗ってほしい」というお声がけも大歓迎です。ぜひわがままをお聞かせください。
作り手の思いを橋渡しするサービス力
独自の企画を動かしていく際には、本の見た目や機能の話だけではなく、「なぜその本を作りたいのか」というお客さま(作り手)の思いも詳しくお聞きしています。大切なご家族への贈り物として世界に一冊だけの本を作った際には、本を収めるための特性の桐箱も製作しました。一生の思い出となる本を、真心を込めてお渡しします。
製本タイプ
培われた製本加工技術
一般的な製本から、前例のない製本まで
アートブック(特殊製本)
「前例のない本を作りたい」「こだわりのデザインイメージを具現化したい」といったご要望にフルオーダーで応えます。多岐にわたる製本技術を駆使して特殊な形状・機能を実現。材料は数千種類におよぶ見本から選定可能。印刷会社様からのご依頼はもちろん、デザイナー様からの個別のご相談にも随時対応しています。ぜひ企画段階からお声がけください。
並製本(ソフトカバー)・上製本(ハードカバー)
一般的な製本にも、もちろん対応しています。ページ数や表紙、見返しなどの仕様書の設計に基づき、出版社様や印刷会社様のオーダーに則って製本。外部企業とのネットワークも多く、仕様に沿ったベストの選択肢の中から工程管理を行い、高いレベルの品質管理・生産管理を維持しています。仕様の微調整や納期・コスト面でのご相談にも柔軟に対応可能です。
ノートブック
当社が長年培ってきた製本技術を最大限に生かし、その新たな可能性を発信していくために、栄久堂オリジナル商品として「ノートブック」を開発しました。さまざまな素材の表紙、さまざまな技術による綴じ方で製本した、他にはないノートたちです。実用性とデザイン性を追求し、今後もラインナップを充実させていきます。
製本技術
無数の製本技術の中から代表例を紹介します。当社オリジナル技術も開発しています。
綴じ方
糸かがり綴じ
いとかがりとじ。本の綴じ方の一つ。本の背を糸で綴じ、下固めとして接着剤を使う。糸の色や太さなどはさまざまなバリエーションがあり、本に耐久性を持たせられるため、長期にわたって使う書物などに用いられている。
無線綴じ / アジロ綴じ
むせんとじ / あじろとじ。本の綴じ方の一つ。流通する出版物の多くに使われている。糸などを使わず、本の背にのりを付け、ページ全体をくるむようにして綴じる。「無線綴じ」「アジロ綴じ」ともに本の背に入れた切れ目からのりを浸透させ、耐久性を高めている。
中綴じ(糸・針金)
なかとじ。本の綴じ方の一つ。糸や針金を使って綴じる。本のノド(根元)まで開けるので見やすく、ページ数の少ないパンフレットなどに適している。
平綴じ(糸・針金)
ひらとじ。本の綴じ方の一つ。本の背にのりを付けて綴じた後に、糸や針金を使って綴じる。無線綴じと中綴じを組み合わせた方法とも言える。学校で使う教科書などに多く使われている。
アズマ綴じ(栄久堂オリジナル)
あずまとじ。本の綴じ方の一つで、栄久堂オリジナルの技術。通常の本の背中にあたる部分に伸縮性のある布を貼り、糸などで綴じることなく製本を可能とする。180度フルフラットで開くため、ページをまたぐ大きな写真や絵柄の表現に最適。
表紙タイプ
小口折り表紙
こぐちおりびょうし。表紙の作り方の一つ。表紙の袖の部分が折れていて、一見すると本のカバーのような見た目となるが、本体とつながっている状態にできる。「がんだれ」と呼ばれることもある。
ホローバック表紙
ほろーばっくひょうし。表紙の作り方の一つ。背中と表紙を接着させずに、背の部分を空洞にする。本が開きやすくなるため、現在では料理のレシピ本や地図など両手を離して読むような本に多く採用されている。
背継ぎ表紙
装丁上の好みや表紙の補強のため、革や布クロス等を背と平の一部にかかるように継ぎ合わせて仕立てた表紙。背皮表紙、背クロス表紙がある。
紐付き表紙
ひもつきひょうし。表紙の作り方の一つ。文字通り本の表紙に紐を付けて、見た目の豪華さを演出できる。店舗のメニューブックなど、小ロットでプレミアム感を出す製本時にも多く採用されている。
角丸表紙
かどまるひょうし。表紙の作り方の一つ。表紙の4つの角を丸く加工し、本全体を柔らかい印象に仕上げることができる。きれいな見た目に仕上げるための裁断や表層材料の貼り込みには高い技術が要求される。
パッケージ
ドイツ装
どいつそう。製本のパッケージの一つ。綴じ方には糸かがり綴じを用い、表紙の背の部分と平の部分に別の素材を使った継ぎ表紙とする。表紙と本文に段差を持たせ、本に高級感をもたらすことができる。
コデックス装
こでっくすそう。製本のパッケージの一つ。綴じ方には糸かがり綴じを用い、表表紙と裏表紙を本の前後に貼る。背中を表紙で覆わない(背表紙がない)状態になるため、180度フルフラットに開くことができる。
スイス装
すいすそう。製本のパッケージの一つ。表紙と本体を「表3と本体の最終ページ」で接着する。本の背中が見えていたり、離れていたりする状態を作ることができ、お洒落な写真集や画集などに用いられることが多い。
その他技術
三方塗装
さんぽうとそう。製本の特殊技術の一つ。本の天地だけでなく、本の側面にも色を塗り、配色の使い分けにさまざまなバリエーションをもたせる。小口塗装によって、特別な見た目の一冊を作ることができる。
箔押し
はくおし。製本の特殊技術の一つ。熱と圧力によって、さまざまな色の図柄を入れる。代表例は金箔を熱転写する加工。本に特別な高級感を持たせることができる。「ホットスタンプ」とも呼ばれる。
空押し
からおし。製本の特殊技術の一つ。絵や図柄、文字などの型をプレスし、へこませる。箔押しよりも落ち着いたデザイン、シックな印象に仕上げたいときに採用される。
題箋貼り
だいせんばり。製本の特殊技術の一つ。書名を書いた短冊状の用紙を表紙に貼る手法。写真や絵などを貼ることもできる。和綴じや和風仕上げの本によく用いられている。「外題貼り」(げだいばり)とも呼ばれる。
加工工程
加工工程ひとつひとつにこだわりを持って取り組んでいます
断裁工程
製本の最初の段階である“断裁”では、
素早くかつ精度の高い技術が要求されます
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こだわりポイント
「刷本」と呼ばれる大きな紙の束を、次工程の作業がしやすい大きさに断裁します。ここで重要となるのが、紙同士がくっつかないように空気を入れる「揃え」の作業。両手で紙をずらしながら持ち上げ、波打つように数回動かしていく、機械では再現できない熟練技です。揃えを正確に行うことによって、平断裁機で指定サイズにカットする際には1mm単位の狂いもない寸法精度を実現しています。
担当者の声
入荷した刷本に最初に触れるのが私たち「断裁師」です。紙は種類によって性質が異なり、揃えの作業を行う際には紙に応じた対応が必要。栄久堂では20〜30年の経験を持つベテランが担当し、高い精度の断裁を実現しています。また、刷本には校正間違いやページのズレなどのトラブルが生じていることも。作業を進めながらこうしたトラブルを早期に発見するのも断裁師の大切な役割です。
折り工程
面付けされた紙をページになるように折り重ね、
「折り丁」を作成します
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こだわりポイント
断裁された刷本を専用の折り機を使って3回折ることで、1枚の紙から最大16ページの紙の束「折り丁」を作成します。紙の材質や厚さなどを考慮して折り機へセットし、紙を送る速度などを適宜調整しながら、機械と息を合わせて進んでいく工程です。栄久堂では折り機4台を備え、A6〜B4の各サイズに対応。「片観音開き」や「三つ折り」などの加工も可能です。
担当者の声
工程を実際に進めていくのは折り機ですが、機械に任せきることはできません。紙の厚みや柔らかさなどを把握し、その特性に合わせて細かく設定を変えていきます。ローラーの調整具合一つとっても、折上がりの精度や見た目に影響する奥深い作業なんです。折り機が稼働している間は一切目を離すことなく、違和感があれば随時設定を見直します。「これくらいでいいや」の妥協が一切許されない仕事です。
丁合い
〜バインダー工程
丁合いから、製本までの大量生産が可能です。
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こだわりポイント
「折り丁」をページ順に取って、表紙と合体させる工程です。栄久堂ではCCDカメラを搭載した検査装置を使用し、落丁や乱丁などが発生しないようにページ順を確認してコンピュータで管理しています。対応する本の厚さは2mm〜50mmまで。糸綴りや小口折り表紙などのさまざまな仕様も可能で、バインダー工程では大型本や広開本など、大きなサイズの製本を進めることもできます。
担当者の声
丁合いの工程では機械をいかに正確にオペレーションするかが問われますが、ここでも「人の手」が重要となります。紙は種類によって厚みや性質が違い、湿度など季節による差も丁合いの仕上がりを左右するため、折り丁を機械へセットする段階では「手で微妙に癖を付ける」ことで、その環境におけるベストな丁合いを実現しています。無数の紙を触ってきたからこそ分かる、経験がなせる技です。
仕上げ
〜出荷工程
本になる最終工程、仕上げです
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こだわりポイント
書店に並ぶ本には、カバーがかかっていたり、カバーの上に腰帯がかかっていたり、売り上げカードが差してあったりとさまざまな付属品があります。最終工程ではトライオートと呼ばれる機械を使用し、こうした付属品を一度にセットして、一般的によく見られる「新刊本」の状態へ仕上げます。人の手と目で正確に検品した後、クラフト用紙などで包装し、お客さまの納品形態に合わせて梱包・出荷します。
担当者の声
本が世の中へ送り出される前には、一冊ずつを目視し、手触りを確かめながら検品を進めていきます。「ページに折れがないか」「表紙が曲がっていないか」などをスピーディーかつ正確にチェックし、少しでも問題があれば取り除いていく最終工程です。栄久堂にお仕事を依頼していただいたお客さまはもちろん、書店などで本を手に取っていただくたくさんの読者のためにも、妥協が許されない仕事です。