温かみと癒しを与える、ベニヤ板の表紙
仕上がりサイズ | A4変形(縦288㎜×左右201㎜×厚さ21㎜) |
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綴じ方 | アズマ綴じ+背中にクロス巻き |
本文 | 136p(ハイマッキンレークラシック 四六135㎏) |
見返し | 4p×2(色上質 黒 最厚口) |
表紙 | シナールベニヤ板 |
皆さんこんにちは。
本日も製本実験室を覗いてくださりありがとうございます!
「あれをやってみよう!」「これはどうかな?」と、今日もいろいろと頭を捻りながらアイデア出しをしています。
今回は一風変わっていますが、なかなか味のあるよいものができました。
それでは本日のおはなしはこちらです。
第40回製本実験
今回は表紙にベニヤを使ってみました。
過去にもべニヤを使用したことはあるのですが、ハードカバーの芯材として使ったので、今回とはちょっと違います。
どんな本?
一見するとただの木の板のようです。…が、中にはちゃんと紙の本文が綴じられています。横から見ると、ベニヤ板特有の美しい木目が分かります。味があってよいですね。
前回べニヤ板を使用した時は、ベニヤ板にクロスを巻き付け外からは見えなくなっていました。しかし、今回はベニヤ板をそのまま使ってみました。外観から木材を表紙に使用していると一目で分かります。
加工面につきましては、通常の製本用の断裁機で断裁もでき、思いの外、加工しやすかったです。また何と言っても、軽いのが良かったです。通常のチップボールよりはるかに軽く、持ち運びしやすく、A4に近いサイズなのに重厚感が一切感じられませんでした。
乾燥時期特有の反りが出ないのもメリットだと思いました。通常のチップボールだと、乾燥している時期には反りが出ますので、すごく加工に気を使います。
開いてみると?
開くと普通の本と同じ様相です。見返しには黒色の紙を貼っています。
開きの良いアズマ綴じで、背にはクロスを貼っているだけですので、ページのノド元までしっかり見えます。
何ができる?
このように木材を使用するのも面白いですね。今回は無垢のまま使いましたが、ペイントしたりニスを塗ったり、様々に手加えることで木の良さを更に際立たせることができると思います。
今回はほぼ思いつきで製本してみましたが、もう少し時間をかけて、木材の良さを考えながら紙の本とのコラボ作品を開発してみたいと思いました。
以前、表紙が木でできたノートがあって、一目惚れして購入したことがあります。手に取る度に感じる木の温かみとほのかに匂う自然の香り…とても癒されました。それは表面にニスなど塗られていないようなものだったので、より香りを強く感じられたのかなと思います。ささくれが起こったりもしていたのでそこはちょっと課題かなと思いましたが。
木は、思い出や懐かしみ、温かさを連想させるので、写真アルバムや歴史にまつわる本などと相性の良さそうな素材です。単純に他と違ってオシャレでもあると思うので、ファッションやインテリアの本として使うのもアリかなと思います。
いろんな素材を組み合わせて一つの作品をつくるというのは、なかなか素敵な試みですよね。過去には、表紙が山羊革でできた本の製作に携わらせていただきました。革の色味や手触り、模様がそれぞれ異なり、一冊一冊が唯一無二の本となりました。
一冊一冊の表情が変わるというのはなかなか面白いです。自分だけのオリジナルの一冊や、大切な贈り物として本をつくりたい時にはこういった素材をチョイスするのもよいと思います。
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今回のおはなし、いかがでしたでしょうか?
この「製本実験室」は、本のデザインや装丁を考えておられる方々にむけて、何かしらのヒントになればと思い、発信しているものです。
もし、お知り合いの方に本の造りやデザインなどにご興味のある方がおられましたら、ご紹介いただけますと幸いです。
電子書籍に本のメジャーを取られそうな現代、少しでも高付加価値のある、後世にも残せていけるような本を作っていきたいと考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
また、次回のおはなしでお会いしましょう。