「チリ」がない上製本(糸綴り上製)
仕上がりサイズ | B5変形版(縦238㎜×左右179㎜×厚さ6㎜) |
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綴じ方 | 糸綴り上製 |
本文 | 64p(オーロラコート 46/160k) |
見返し | HS画王 B/T/109k |
表紙 | ヴィンテージゴールド(モス)46/107k 芯材:NPCC#34 |
みなさんは上製本と並製本、どちらの本を読むことが多いですか?
わたしは本が家にたくさんあるので、できれば並製本で大きさも小さめの文庫本を買いたいのですが…
どうしても新刊を読みたい時は上製本の単行本を買ったりもします。
結果、嵩張るのは分かっていますが、上製本の本が増えていってしまいます…。
でも、がっちりとした表紙で、本を読んでる~って感じがしていいですよね。
雨の日にお家でコーヒーを飲みながら、買ったばかりの新刊書を読む。いいですね~。
並製本と上製本の違いは?
並製本と上製本って何?という方のために…ちょっとだけご説明を。
並製本
表紙が本文とあまり変わらない厚さの紙のものを並製本と言います。こちらはソフトカバーとも呼ばれる種類の本です。
本文と同じタイプの表紙ですので持ち運びのことを考えられた本とも言えます。
上製本
世に出回っているハードカバータイプの本のことです。表紙が本文とは違い、厚紙が使用されています。小説に使われることが多いです。
通常、上製本には「チリ」と言って表紙に本文より大きい部分があります。漢字では「散り」と書きます。
ハードカバーの本がお家にあれば、ぜひお手元に持ってきてみてください。3mmくらい本文より表紙の方が大きくなっていると思います。これが「チリ」であり、本文を守る大切な役目を果たしています。
今回は、そんな「チリ」をなくした上製本をつくってみました。
本日のおはなしはこちらです。
第21回製本実験
こちらが今回試しにつくってみた上製本です。本文と全く同じサイズの表紙になっています。
最後の工程で本の三方を断裁してしまうので、表紙の芯材(ボール紙)の断面が見えているのが特徴ですね。
どんな本?
本全体の印象については、ちょうど上製本と並製本の中間的な要素を感じます。
上製本ほど畏まった感じはなく、また並製本ほどカジュアルでもない。そんなちょうど中間の感じ。
ただチリがあるか無いかの違いだけで、こんなに印象が変わるのは面白いですね。スッキリとした感じでがっつり!とまではいかずとも少しだけ格式高さを感じさせたい時にいいかもしれません。
本の大きさを考えると、これくらいの厚さがちょうど良いのかも知れません。もう少し小さければ厚さが増えても大丈夫な気はしますが、大体上製本の表紙(厚紙部分)が3mmあります。A4コピー用紙に換算するとおおよそ37枚分の厚さでした。
表表紙と裏表紙、と考えるとやはり重さもそれなりです。
開いてみると?
開くとノートブックみたいですね。今回は糸で綴じています。
本文用紙には、様々な場面で使える、オーロラコートを使用しています。グロス感が特徴で、印刷再現性が高い点が長所です。
さて、今回のおはなしはいかがでしたか?
チリのない上製本、なかなか斬新でいいと思います。
上製本でたまに小口で遊んでいるものがありますよね。小口染めをしてきれいな色の断面にしたり、紙替えをしてカラフルにしてみたり。
チリがなければ小口のデザインが際立つので、本の断面で遊んだデザインにしても面白いかもしれません。
凝った加工にするとそれだけ費用が嵩むかもしれませんが…。唯一無二の本が出来上がりそうです。
最後までお読みいただきありがとうございます。
また次回のおはなしでお会いしましょう!